日本シン名所百選 日本シン名所百選

TINY GARDEN

白樺の林が風にそよぐ蓼科湖の畔に佇む隠れ家がある。標高1250mの高原に位置するTINY GARDEN 蓼科は、都会の喧騒から逃れ、自然の懐に抱かれた時間を求める者たちを静かに招き入れる。その主宰者はアパレルブランドURBAN RESEARCHだ。彼らのセンスは施設全体に息づき、無垢の木材とグレーを基調とした洗練された空間を生み出している。

「海でもなく山でもなく、湖へ。暮らすように過ごす、自然と境界が溶けていく」というコンセプトが示すように、ここでは日常と非日常の境界が曖昧となり、白樺の木々と蓼科湖の佇まいが、訪れる者の感覚を優しく包み込む。約4800坪の広大な敷地には、温泉旅館をリノベーションしたロッジ、独立したキャビン、そして星空を仰ぐキャンプサイトが点在し、多様な滞在スタイルを可能にしている。

ロッジには全7室の客室があり、URBAN RESEARCHオリジナルの家具や設備が配された空間で、湖畔の静けさを味わえる。特にLODGE COMFORTは湖畔を望む特別な1室で、贅沢な時間を約束する。キャビンは24棟が点在し、一棟貸しスタイルで家族や仲間との距離を縮める。キャンプエリアを一望できる窓枠を活かしたCABIN COMFORTは、自然を身近に感じさせる。ペット同伴可能なPET CABINも用意され、愛犬との旅も叶う。

湖畔から森へ進むと、白樺の木々に囲まれたキャンプ場が広がる。オートサイトとフリーサイトがあり、高原の澄んだ空気の中、満天の星空を眺めながら過ごせる。共有のトイレやサニタリーハウスも完備され、初心者でも安心だ。

旅の疲れを癒すのは、ロッジ地下の温泉だ。近くの滝の湯温泉元湯から引かれた弱酸性のさらりとした湯は、全ての宿泊者が利用できる。シャンプー、リンス、ボディソープ、ドライヤーなどのアメニティも揃い、キャビンやキャンプサイトの利用者も気軽に立ち寄れる憩いの場となっている。

より本格的な体験を求めるなら、キャンプエリア内に新設されたプライベートサウナ「SAUNA CABIN HU」がある。エストニア製の薪ストーブ「HUUM」は本場の良質なサウナ体験を約束する。セルフロウリュを楽しみながら、白樺の木漏れ日が差し込む静寂の中で、心身を解放する贅沢な時間を過ごせる。水風呂には八ヶ岳の清冽な伏流水が使用され、暑さと冷たさの対比がもたらす快感は、サウナ愛好家を魅了する。利用は1回100分で、13時、15時、翌朝11時からの3つの時間帯から選べる。1〜3名までのプライベート利用なので、家族や親しい仲間とゆったりと楽しめるのも魅力だ。サービスにはタオルセットとポンチョも含まれており、手ぶらで利用できる気遣いも嬉しい。かつてはテントサウナも存在したが、現在は休止中で、代わりにこの本格的なサウナキャビンが設置された。都会のサウナとは異なる、自然に囲まれた中での静謐なサウナ体験は、まさに五感を研ぎ澄ます特別な時間となる。

朝には湖畔や白樺林でのモーニングヨガも開催され、身も心も解放される。

食事は地元の恵みを堪能する。レストランでは信州の食材をふんだんに使ったコースが提供され、素材本来の味を活かした手作りの味が楽しめる。オープンテラスに続くカフェでは、信州味噌のガパオライスや鹿肉タコライスなど、地元の味覚を取り入れた料理と、地元ハーブティーやコーヒーを味わえる。冬には特別なディナープランも用意される。

周辺には自然と文化が溢れている。八ヶ岳へのハイキング、フォレストアドベンチャー・蓼科での空中散歩、白樺湖でのカヌーツアー、冬のスキーやスノーボードなど、四季折々のアクティビティが楽しめる。絵画のモチーフになった御射鹿池、国宝を展示する茅野市尖石縄文考古館、世界各地のテディベアを集めた蓼科テディベア美術館など、文化的な施設も点在する。

アクセスは新宿から特急あずさで茅野駅まで約2時間、そこからバスで約30分。車なら新宿から約2.5時間だ。金曜と土曜には茅野駅からの直行バスも運行される。

TINY GARDEN 蓼科は、洗練された空間と自然の調和が生む特別な場所だ。ロッジの快適さ、キャビンの親密さ、キャンプの開放感など、好みに合わせた滞在スタイルを選べるのも魅力のひとつ。都会の喧騒を忘れ、蓼科湖畔の静寂に身を委ねる休日は、忙しい日常から解放された、本来の自分を取り戻す時間となるだろう。

文・一順二(にのまえ じゅんじ)

一順二(にのまえじゅんじ)
猫のロキ
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